私はいわゆる、一流企業に勤めるOLだ。
一日中パソコンの前に座り、書類の作成に追われ、大量のコピーを取っては数枚束の冊子を作り、プレゼン会議用の映像資料を作ったりしている。
連日の残業はもう当たり前で、時間はいくらあっても足りないくらいだ。
しかしこのご時世、残業なんてやってもお金にはならないし、やるだけ無駄だとは思っているが、やらないと翌日の仕事に影響が出るのは、私の精神衛生上よろしくない。
ということで、今まさに、2時間のサービス残業を終えて帰宅する所である。
一刻も早く家に帰りたいというのが、今最も私の頭の中を支配している。
オフィスビルを出てすぐに、見慣れた姿がそこにあった。




「よ。やっと終わったか。」
「虎徹?!どうしたの?」
「やー、近くまで来たもんだから一緒に帰ろうと思ってな。」
「…まさか、私の終業時間からずっとここで…?」
「気にすんなって!さ、帰ろうぜ。」




虎徹が寄りかかっていた車のドアを開け、私をエスコートして助手席へ座らせる。
続いて虎徹も運転席へ座り、車はブロンズステージにある虎徹の家へと向かって走り出した。
ここからは約30分程で着く。
他愛もない話をしていればあっという間だ。
車を降りるのも虎徹のエスコート付で、「お帰りなさいませ、お嬢様!」なんて言われては、たまったものじゃない。




「今夜のディナーは何かしら。」
「でぃなー?!あーっと…俺特製のチャーハンだ!愛情たっぷりの、な。」
「たっぷり入ってるのはマヨネーズの方でしょ。」
「いや、どっちかってーと愛情の方が多いぞ…」




そのまま唇を奪われたら、ぐうの音も出ない。




「ソファで座って待ってろ!俺が腕によりをかけて作ってやるからな!」




そう言い、虎徹はキッチンへと勇み足で入っていった。
私はというと、手持無沙汰になったので、キッチンへと様子見がてら入ってみた。




「何か手伝おうか?」
「いや、疲れてんだろ?ゆっくりしてろよ。」
「虎徹こそ!ヒーローが何言ってんのよ。」




さり気無く虎徹の隣に並んで立ってみる。




「…やっぱりマヨネーズだ。」
「これで旨くなるんだって!」
「まぁ、私はそれを身をもって知ってますけどね。」




チューブから指にとって舐めてみる。




、俺にも。」
「ん。」




あーん、と口を大きく開ける虎徹にも指にマヨネーズを取って与える。
心境はまるで雛鳥に餌をやる親鳥だ。




しかし、マヨネーズだけでなく、指ごと虎徹の口に飲み込まれた。




モドル