兵藤、妹尾、漆原のいた天幕を出て、新城中尉に宛がわれた天幕へと戻るべく、寒空の下を歩く。 「は…寒っ…」 吐く息も白く、顔は痛い程だ。 ふと空を見上げてみる。無数の星が輝いている。 幼い頃に見た空と全く変わらないまま。 まるで、宝石箱をひっくり返したかの様に、いや、それ以上に美しい。 「どうした、空を見上げて。」 聞き慣れた声がした。 首を真っ直ぐに直すと、そこには新城中尉がいた。 「星は変わらないと思って。」 きっと、皇国で見る星空も、帝国で見る星空も、昔見た星空も、今見ている星空も、 一人で見る星空も、誰かと見る星空も、何一つ、変わらないんだ。 「そうか?…僕は、」 ざっざっと、雪を踏む音がする。 気配は間近にまで迫ってくる。 「どんな星よりも、の方が美しいと思うんだが。」 爆弾発言をさらりと吐く。 どう反応していいのかわからず、とりあえず恥ずかしさが先行し、俯くしかできない。 「…よくまぁそんな台詞をつらつらと吐けますね。」 「僕の本心だ、仕方ない。偽ってどうする。」 ああ言えばこう言う。こうなればもう諦める他ないだろう。 「好きにしてください…」 「そうか。じゃあ遠慮なく。」 横に並んだかと思いきや、肩を抱かれ、より密着する。 「僕達の天幕に戻るぞ。」 不思議とさっきまでの痛い程の寒さが和らいだ気がする。 「これ大丈夫ですか?誤解されませんか?」 ついさっき、将校に口止めしたばかりなのに! 「その時はその時だ。どうにでもなる。」 この人がそう言うと、本当にどうにかなりそうで恐ろしい。 「なんだ、僕を信じられないのか?」 「お任せしてますから。」 「なら良い。」 何だかんだと話しながら、気が付けば宛がわれた天幕の前に着いていた。 新城中尉に入り口を開けられ、中へ入るように促される。 「新城中尉、間違っても気を違えないでくださいね。」 「おぉ、それは手厳しいな。安心しろ、俺が守ってやる、。」 「…いや、だから話が噛み合ってませんけど。」 「気にするな。」 モドル |