あの後はすぐに解散となった。 兵藤、妹尾、漆原の3人は自分達に宛がわれた天幕の隅で…溜息に埋もれていた。 「どおりで小さいわけだ…」 「胸か?」 「か・ら・だ・が・だ!」 「…兵藤少尉…」 漆原の呟きに、見当違いの突っ込みをする兵藤。 「でも本当に驚いた。」 「にしちゃあ冷静すぎねえか、妹尾?」 「…でも、あの名前…聞いたことあるだろう?兵藤少尉も。」 「まぁ、な…」 ふぅ、と兵藤、妹尾の2人は並んでまた溜息を吐く。 「何だよ、どーゆー事だよ…」 「…そっか、漆原、お前はあん時大隊長殿と一緒に軍議に出ていたんだっけか。」 じゃあ自分から、と妹尾が以前にあった事の経緯を話し始めた。 「うわ言で自分の名前を呼ぶとは…」 「あの時は妹さんの名前かと思ってたんだけどね。」 「ま、強ち外れちゃねえだろ。」 胡坐をかいた膝の上に腕を立て、その掌に顎を乗せた兵藤が言う。 「俺の予想じゃ、“”にとっちゃ“”は妹なんだろうよ。」 再びしんとした空気が3人を包む。 「すると、なんでアイツは兄の名を名乗っているんだろうな。」 「知りたいか?」 「まぁな…って、え?」 兵藤の呟きに4人目の声が混ざった。話題の人物だ。 「兵藤、なかなか良い勘をしているんだな。」 「く…あ、いや、」 口ごもる妹尾にが苦笑を漏らした。 「でいいよ。逆に“”で呼ばれると困ることもあるし…」 3人の頭にふと過ぎるのはあの男の顔。 考えるだけでも恐ろしい。 「確かに、“”は私の兄の名だ。で、その兄の名を名乗る理由だな…」 の表情が陰る。今までに彼女のそんな表情は見たことがない。 「兄は、死んだんだ。この戦争で。皇国の為に戦って、死んだ。 私もこの皇国を守りたかったんだ。この国を…愛しているから。」 そう言って笑うの表情は、何よりも美しかった。 「遅くにゴメンな!3人にはちゃんと説明しておきたかったんだ。じゃあ、また明日!」 モドル |