「集まったな。」




狭い天幕の中に少尉以上の将校が数名。




その中には、兵藤、妹尾、漆原の姿もあった。




(なぁ妹尾、漆原。俺達何で呼ばれたんだ?)




(さぁ…妹尾、知っているかい?)




(僕もよくは…。ただ、重要な話らしいけど。)




(んなこたぁわかんだよ!この面子だ、理解しない方がおかしいだろっ!)




(はは…。あ、あともう一つ気になっていることがあるんだけど…)




(あぁ、気になるよな…)




(うん?)




((( … … )))




(え、なに?)




(((なんでが新城大隊長の隣にいるかだよっ!)))




(…あ、本当だ!)




「よし、話を始めるぞ。」




それまでざわざわとしていた場が一気に静まり返った。




「いいか、これから話すことは最重要機密だ。
例え信頼のおける部下であっても他言無用、僕が絶対に許さない。」




誰かのごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。




「では、ここからは安藤に発言してもらう。」




新城中尉に場を促され、前に立つと、痛い程の緊張感が張りつめている。




その雰囲気に気圧されていると、肩をぽんぽんと叩かれた。




新城中尉だ。私が緊張していることを察してくれたのか。




そしてその表情は、安心させてくれる…まるで兄様のように、優しい笑みを浮かべていた。




大分落ち着いた気がする。大丈夫、何も問題はない。




敬礼を一つして、口を開き、声を出す。




「自分、安藤は、理由あって名前を偽っておりました。
自分の本来の名は、安東と申します。」




場がどよめく。それはそうだ。




名前だけでは無く、性別までも偽っていたのだから。




(…おい、って…)




(うん…そうですよね…)




(何だ、どうしたんだ?)




「静かにしろ!いいか、これは最重要機密だ。」




新城中尉が私の左側から前に出た。




「彼女の“事実”が一般兵どもに漏れたらどうなるか、わかるな?」




つまりは、狼の群れの中に兎が一匹混じっているようなものだ。




餓えた狼は兎を頭から喰らい尽くす…骨も残らないほどに。




「もし彼女の身に何らかの危険が及んだ場合…」




ゴクリ…また誰かが唾を飲み込んだ。




「その命、無いと思え。は、僕のものだ。」










モドル