は千早と頬を擦り寄せ再会を果たすと、今度は僕の後ろに周り、背をぐいぐいと押してくる。




は、あっちにいるのか?」




答えるようにニャアと鳴いた。




「急ごう。」




走り出すとはぐぉんと吠え、先頭に立った。




千早は僕の後を付いてきた。




は真っ直ぐ、迷い無く走る。




少しすると前方に不自然な塊があり、がまたぐぉんと吠える。




その塊に向かって一人の帝国軍人が歩く。




…あれはもしや…!




っ!」




気が付くと前を走っていたを追い越し、腰に挿していた剣を抜き、
帝国軍人の懐に潜り込み心臓目掛けて剣を突き立てていた。




力の抜けた体をそのまま向こう側へと倒し、貫いた剣を引き抜き鞘へ納めた。




「新城…中尉…?」




聞きたかった声で名を呼ばれ、後ろを振り向いた。








致命傷を与え、虫の息だった帝国軍の男が立ち上がる気配がした。




ぜいぜいと荒い呼吸をしながら私の方へと近づいて来る。




…このまま抵抗しなければきっと、楽になれるんだ。




ねぇ…そうでしょう、兄上…?




…最期に、一目でも、新城中尉に…。




ふと、虚ろな視界に黒い影が差した。




私の想いを断ち切るように…いや、逆だ。




私の想いが通じたのだ。




「新城、中尉…?」




恐る恐る、名を呼んでみる。




これが幻覚だったら何という悪夢だ。




「直衛だ。…、怪我はないか?」




「はい。…大きいのは。」




「よかった、立てるか?」




「はい…っ、あ」




立てた膝に手をかけ力を込めるが上手く行かず、倒れそうになる。




「おいっ!」




直衛の慌てた声がし、両脇を支えられた。




「すいませ…ん」




「いや、大丈夫か?」




「は…」




あげた顔の、距離の近さに驚いた。




それはだけではなく、直衛も同じだったようで。




互いに少し引いた所で、遠くからざっざっと雪を踏み、こちらに近づいて来る音がした。




「中尉殿!」




猪口曹長以下数名であった。






モドル