気が付いた時には、私はこの戦場で独りになっていた。









昂りに震えていた心は既に醒め、もう恐れという感情しかない。




「…、新城中尉…どこ…?!」




呼べる名前はそれしか知らない。




すぐ傍でグォォオッと唸るの声が聞こえた。




見つけて駆け寄ると、夥しい量の血を浴びていた。




きっと私を守るために闘ってくれていたのだろう。




先程までの自分の姿を思い出し、体が震える。




皆は何処?




兵藤、妹尾、漆原、猪口曹長…新城中尉…!














この混乱の中では、が何処にいるのか知るのは容易い事ではない。




一刻も早く見付けなくては…!




傍に居ろと言ったのに。




隣に居ると言ったのに。




護ってやると誓ったのに!




このままを失うだなんて真っ平御免だ。




は僕のこの手で殺すんだ。




他の奴に殺されるだなんて、この僕が赦さない。














兄上、母上、私はこの皇国の為に少しでも役に立てたのでしょうか。




新城中尉の足を引っ張ってはいなかったでしょうか。




ああ、親愛なる兄上。




もうすぐお側に参ります。




母上、最期まで親不孝な娘で申し訳ございません。




そして、新城中尉殿。




最期はあなたに殺されると誓ったのに、約束を果たせそうにありません。














千早が何かに気付いたのか、遠くに耳を立てる。




そして走り始めた。




「おいっ、千早?!」




反射的に僕は千早を追って走る。




見失わない様に追う人間の限界を知ってか知らずか、ギリギリの速度で走る千早。




ややすると、前方から駆けてきた別の猫と合流した。




やっと追い付き、その猫を見る。




千早よりも一回り大きい身体。




「…もしかして、か…?」




僕の問いに答えるようにぐぉんと鳴いた。






モドル