「みんな、無事かぁーっ?!」




「少尉殿!」




漆原の声に、猪口が答えた。




「曹長!また会えたか!…組まれかけの方陣はどうにか突き崩したな。中隊長殿は一緒では無いのか?」




「突撃の連続で中隊の半分はどこへいったやらわからない状況でして…」




猪口の言葉に漆原の表情が曇る。




「少尉殿!」




それを打ち消すように猪口が声をあげる。




「中尉殿の傍には必ず千早がおります。」




「…では、残る心配はだけか…。」




「いえ、彼の傍には中尉殿がおります。必ず大丈夫です!」




「…そうか。そうだな。」









整然と列を成した帝国軍の放つ銃撃が一斉に自軍に襲い掛かる。




駄目だ。




帝国軍も白色燭燐弾をあげ、折悪く突撃した大隊主力が一斉射撃をまともに受けてしまった。




…ここまでだ。




すぐに後退しなければ玉砕しかねない。




…いや、は大丈夫だろうか。




この混乱の中、はぐれてしまった。




…僕が守ると誓ったのに!




考えに気を取られていると目の前をひゅ、と帝国軍人のサーベルが掠めた。




寸での所で避け、首めがけて旋条銃を振りかぶる。




「う゛ぅう゛るぅおぉっ!!」




グチャッという音とともに、帝国軍人は動かなくなった。




自分も立ち去ろうとするが、旋条銃が減り込んで抜けなくなってしまった。




足をかけて力を込めるが、それでも抜けない。




こんな事に手間取っている場合ではない。




を早く探さなくては…!




「オォォオッ!」




真後ろで千早の咆哮がしたと思うと、帝国軍人を地に屠っていた。




…助けられたか。




そうだな、壊れた旋条銃などいらない。




「よしっ」




腰に提げた剣を抜く。




「まるで僕を励ます様じゃないか、おい!」




千早の頭を撫でてやる。




牙には先程屠った帝国軍人の手首から先が付いたままだった。




人間にも赤身と脂身があることを知る。




「邪魔だろう?」




ぶん、と投げた。









は、何処だ?






モドル