“帝国”兵の恐れ戦く悲鳴がする。




「総員、我に続けぇーっ!」




逃げる事も反撃する事も叶わず、猫に喉元を食い破られ死んで行く。




私も銃剣で応戦し、気が付けば辺りは静かになっていた。




「…ここの敵は片付きました。大半が逃げています。」




「退路を断たれる心配だけは無くなったな。損害は?」




「兵が10名程。」




「そんなに死なせたか。」




「撤退しますか?」




「まだ青色燭燐弾が上がっていない。それに定められた時刻まで半刻以上余っている。」




「それでは?」




険しい表情から一転、暗雲の晴れた様な顔をする。




「猪口曹長、陸軍幼年学校の営庭で僕に何を教えたか覚えているか?」




今となっては新城中尉の方が猪口曹長よりも階級が上だが、以前はきっと立場が逆だったのだろう。




「“兵隊は走るのが商売。”」




二人とも小気味の良い表情で言う。




「その商売をしようじゃないか。敵側面を森沿いに回り込んで大隊主力を援護するのだ。」




すぐに顔が引き締まる。




「無闇に猫を突っ込ませるな。直ちに伝達!」




「了解!集合かけます。」




猪口曹長は走って行ってしまった。ここには私と、千早と新城中尉しかいない。




若干、気まずい。




そろり、に向き合おうと動く。




。」




「っ、はい…?」




名を呼ばれ、姿勢まで正してしまう。




「…これからもっと厳しくなる。ついてこれるか?」




優しい言葉。




いや、試されているのか?




「ついていきます。ここで放り出されても野垂れ死ぬだけですし。」




なら、応えてやろう。




「それに、誰が自分を守ってくれるんですか?」




言ってやった。…言ってしまった…。




これは気温の低さからか、それとも冷や汗か。




点になっていた新城中尉の瞳が妖しく光る。




「ほう。それは僕に対する挑戦かい?それとも」




ぐ。距離が狭まる。




「愛の告白か…なぁ、。」




「っ!?」










モドル