「総員着剣、総員着剣!」 金属音が周りからする。 私も漏れず、金属音をさせる。 遠くの闇からも閃光と、低く轟く咆哮。 大隊主力も突撃に移ろうとしているのだろうか。 「次に主力が射撃を実施したならば、ゆくぞ。」 隣に座る千早の頭を撫でる。 「欲しいかい?…僕の望みもお前と同じだ。」 狂気に満ちた表情に、背筋を走る冷たい汗。 この人は、戦争を楽しんでいるのだろうか。 「よろしくありますか、中隊長殿。」 「よろしくないわけでもあるか?僕らは剣虎兵なのだ。…断然攻撃あるのみだ。粉砕してやる。」 それまで前方―敵のいる方向を見ていた新城中尉が、すっと私の耳元まで口を寄せる。 「これからは混戦になる。必ず僕の傍から離れるな…。」 極めつけにニヤリと笑われては逆らうことなど出来はしない。 「了解致しました…新城中隊長殿。」 答えるとまたニヤリと笑い、正面を向くと、真剣な眼差しになる。 「目標、敵先鋒本部部隊!躍進距離300!総員突撃にィ移れェっ!」 すうっ…空気を肺に吸い込む音がする。 左手に銃を握り、右手はすっと前に出し、 「突撃!!」 『グオォォオオ!』 耳を塞ぎたくなる程の咆哮と雄叫び。 けど、これに負けてはいられない。 「いくよ、。」 頷く様に頭を擦り寄せて来る。 「うおぉおおぉお!」 『グァオォオァァオオン!』 剣牙虎は鋭い爪で皮膚を裂き、太い牙で四肢に、喉元に食らい付き、“帝国”軍の命を次々と奪う。 私はといえば、“帝国”軍を次々と屠っていく新城中尉を見失わない様、付いていくので精一杯だった。 それでも敵は向かって来る。 「う、お、お!」 刃が肉を切り、そこから血が吹き出して来る。 顔にもいくらか飛んだかもしれない。 「―中尉殿…」 漆原の声がした。 その視線の先には、返り血で染まった新城中尉がいた。 「少尉。“まともでいる”という贅沢は後で楽しめ。」 モドル |