それまで正座していた…いや、が膝立ちになり、大きな声で思いもかけないことを言った。 「…処分?」 「はい。」 表情は至って真剣。僕も真面目にそれを受け止める。 「君は、処分を望んでいるのか?」 「…はぁ?!」 一転、素っ頓狂な声をあげた。いや、それ以前にきっと僕の方が素っ頓狂な事を言っているのだろう。 「いや、だって、本来軍隊に入る事の許されない女が、妾の子ではあるけれどしかし貴族が、 身分も性別も偽って前線の部隊に殴り込んだんですよ?!」 「そうだな。」 「そうだなって…」 「そういえば、妾の子だと言ったな。」 色々と彼女の事を知る程に 「はぁ…姓から汲んで頂ければ。」 この娘が、 「安東、か。」 「その通り、です。」 愛しいと思ってしまうのは狂っているのだろうか。 「で、処分だが。」 だから、からかってしまいたくなる。 「…処分を下すことなどあったか、?」 傍に置いておきたいと思う。 「…はぁっ?!」 全くこの人は!頭がいかれたんじゃなかろうか! 業とらしく私を偽った名で呼び、何か企んでいる様にニヤニヤと笑う。 「もう一度聞くが、。君は処分を望んでいるのか?」 「…いえ…」 真意が、汲み取れない。何か、ある筈だ。 「では、処分を下すことがあったか?」 「あ」 今、やっと分かった。 この人は、新城中尉は、今起こった全ての出来事を無かった事にしようとしているんだ。 「…何も起こりませんでした。」 きっとこれが新城中尉の望んでいる私の答え、だろう。 真直ぐに彼の瞳を見据えて言うと、満足そうに笑いながら私を見ていた。 「これでやっと、大義名分が果たせるな。」 「な、なんですか、それ。」 似合わない、気障な笑みをたたえながら言う。 「これで、今度こそ敵が来ても守ってやれる…な、。」 それは、ついさっきと言うには時間が経ちすぎているけれど、新城中尉にいわれた言葉。 それに私はこう、返したはずだ。 『そーゆーコトは生涯愛する女の為にとっておけ』と。 モドル |