さっきから心臓が五月蝿い位に鳴っている。




女だと分かった以上、間違いなく家に戻されるだろう。




嫌だ嫌だ!やっとここまで来たのに!




言うなら早く言って欲しい私の心情とは裏腹に、目の前の男は足を崩し胡坐をかき、
腕を組んでうーんと唸っている。




「あ、あのっ!」




「なぁ…」




先手を打とうと思ったら今度は同時に発言した。




「…新城中尉からどうぞ。」




「あぁ、悪い。もう1つだけ聞かせてくれ。」




「な、なんでしょう…」




「大隊長殿との繋がりは分かった。が、あの天龍とはどう繋がるんだ?」




「…は?!」




何かと思ったら!




本人はその質問を至極当然のようにしてきた。




まぁ答えますけどね!




「一之丞様には、幼い頃に命を助けて頂いたご恩があるのです。」




「命を…?」




を拾ってきてまだ間もない頃。母様と兄様とと私で別荘に避暑に行った時の事です。」




見るもの全てが珍しく、新鮮だったが嬉しそうに森の中を走り回り、私はそれを追っているうちに
近付いてはならないとずっと言い聞かせられていた区域に入っていたとは知らず、
道も分からなくなり、陽も沈み…




やっと捕まえたを腕いっぱいに抱きしめ、不安を紛らわせ。




ごう、と風が吹いたと思ったら、真横に崖があったのに気付かず、足を踏み外し、落ちたのです。




それをたまたま通りがかった一之丞様に助けて頂いたのです。




恐怖に泣く私を一晩中慰めて下さいました。導術で優しく語り掛けて下さり、明くる朝、
別荘までその背に乗せて頂き、母様と兄様に事情の説明もして下さいました。




「それから避暑に行く度に、一之丞様と会うご縁となったのです。」




「…そうか。」




それだけいい、腕を組み直し、今度は空中を見上げた。




もう、我慢できない!




「あのっ!」




「あぁ、」




また被った!なんなんだ、本当に!




「何ですか?!」




「今度はからだ。何か云いたかったんだろう?」




…この男は本当に…!




ぐいっと詰め寄り、怒鳴るようにして言う。




「私の処分はどうなさるのですか?!」










モドル