息の詰まる軍議がやっと終わり、部屋へと戻る。 そして障子の前に立ち…悩む。 ここは一言断りを入れるべきか? いや、元は自分が宛がわれた部屋だ。 それに断りを入れるのはそっちの方がおかしいんじゃないのか。 けれどもしが着替えていたら? いや、も男なんだ、何も恥らう事などない。 寧ろ恥らわれる方が恥ずかしい。 結論を出し、一気に障子を開けた。 部屋の真ん中に上着を脱ぎ、こちらに背を向けて座る。 …の筈だが、その身体は男にはない丸みを帯びている。 線も細く、色も白い。 我が目を疑う。 冷たい風が吹き込んだ。 それまでぼうっとしていたのを振り払った。 「……?!」 ビクッと跳ねる肩。 ばっと振り向く顔。 過呼吸になったかのように一気に空気を飲む音がした。 ――叫ぶ――思った瞬間、身体が動いた。 障子を閉め、口を塞ぐ様に正面から。 黙らせた。…いや、 抱き締めた。 これは不可抗力だ、仕方ないんだ。 そう自分に言い聞かせ、納得させた。 服越しに感じる柔らかさになど気を取られはしない!…あ。 ぐ、と腕に力を込め、キツク、抱き締める。 ややすると苦しそうにが僕の背をばんばんと叩き始める。 締めすぎた腕の力を緩めてやると「ぷは、」とは小さく息継ぎをした。 赤く染まった小さな顔、涙の滲む黒曜の瞳。 「、君は…」 女だったのか、言いかけ、言葉が詰まる。 きっと知られたくなかったのだろう。特に僕には。 この戦場のど真ん中に女が一人、何をされるか分からない。 それに僕に知られては、非戦闘地域に強制送還されると思ったのだろう。 だから男だと偽って… 「あの、新城中尉…全てお話しするので…」 「…何だ?」 歯切れが悪いので聞き返してみると、視線を逸らせながら眉根を顰め、口元も引き攣った。 「…服を着させて頂きたいのでいい加減離れて頂きたいのですが…!!」 「あ、わ、悪い。」 ギュ、と目を瞑りながらに背を向ける。 思わず正座になってしまう。 思わず身体の細さを思い出す。 思わず柔らかさの正体を追ってしまう。 思わず…思わず…! モドル |