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千早をおさえながら一之丞と天馬を見つめる。 …あの2人(正確には1人と1匹)が、知り合い、だと…? …伊藤大隊長殿といい、今度は天龍と…天馬は一体どんな人間関係を持っているんだ。 “アンドウ”というのは五将家にあるが、天馬の姓は“安東”ではなく“安藤”だ。 関係が無いとも限らないが、ありふれている。 考えを振り切り、療兵に逆鱗に気を付ける様に言う。 すると一之丞は天馬からす、と顔を上げた。 そのまま自然と2人は離れ、天馬と深雪は僕の方へと歩いて来た。 表情を窺おうとしたが、俯いていてわからなかった。 <中尉殿もあの迷信を信じておられるのか?> 「逆鱗が実在するのかは兎も角、出来得る限りの配慮を。」 言いながら千早の咽喉を撫でてやるとゴロゴロと音を鳴らしていた。 <…“逆鱗”に関しては私の故郷、龍塞では笑い話の類です。中尉殿の故郷はどちらです?> 「東州のどこかです。…あ、いえ。本当の故郷はよくわからないのです。」 一之丞の元へとまた駆け出そうとする千早を抑えながら聞かれた問いに答える。 …こうもあっさり言える様になるとは、僕も、幼い頃は思いもしなかった。 <…まことに申し訳ない…> 「…いえ、全ては戦のせいですから。」 <貴官の御両親、その御霊の安らがれんことを。> ゆっくりと、頭を下げながら言われた。 ちら、と天馬を見やると何の事だ、と言わんばかりにキョトンとしていた。 治療も終わり、傷口は包帯でしっかりと巻かれていた。 <療兵殿、まことにありがとう。> 「か…過分なお言葉、光栄であります!」 療兵は腕が千切れんばかりに敬礼をし、一之丞はふわりと中空に浮いた。 <出来得るならば今少し、貴官との会話を楽しみたいが…> 「残念です。現在我が軍はあまり芳しくない状況にあり、自分らは軍人としての義務を果たさねばなりません。」 <…貴官らに、龍神の加護のあらんことを!> 去り際こちらを見、一之丞は飛んでいった。 天馬の表情は相変わらず読めなかった。 モドル |