「中尉殿!一番元気な者を最後尾の橇に乗せました!」 「名は?」 「金森です。二等導術兵」 導術兵に連れられ新城中尉は歩き出した。 …面白そう。ついていこう。 最後尾の橇に乗っていたのはまだ幼い少年だった。 途中、導術について色々と話していたのを聞いたが… “若いのが熟練せずに導術を使用すれば体力を消耗していき、酷い場合は死んじまいます” 聞いた筈なのにこの人は…新城中尉は、この少年を裏切るかの様に、手懐けようとしているのか…! 「自分も頑張ります!勇気を出して…!」 その言葉を聞くと新城中尉はポン、と少年の腕を叩き、背を向けた。 瞬間見えた表情はとても痛々しくて。 私は慌てて新城中尉の後を追った。 そして言ってやる。 「…傲慢ですね、新城中尉。」 「何、だと…?!」 「自分の上官でなければ殺してやりたい程ですよ。」 「 … … 」 「それに、」 「 … … 」 「…そんなに心を痛められるなら、仰らなければ宜しいのに…。」 目が、合わせられない。 「…差し出がましい事を申し上げました。申し訳、ございません。」 「…いや、」 怒っているのかと、思った。 「僕も今、そう思っていた所だ。」 怒られるのかと、思った。 が、反して少し自嘲的な笑いを浮かべながらそんな事を私に言った。 「中尉殿?橇全部組上がりました。」 「背嚢は小休止毎に交代で乗せろ。…猫も交代させないとな…」 は橇を引く役割には当てられていないけれど、この猫達とは確実に疲労の度合いが違うだろう。 「首当ても作ったのか?」 「そのあるなしで疲れ具合が大違いになります。」 猪口曹長のその言葉に新城中尉はニカっと笑って 「よく教えてくれた!」 猪口曹長と私は同時に固まった。 「…猪口曹長。」 「…何だ、安藤。」 「新城中尉のあの笑顔は犯罪だと思いませんか?」 「…さぁ、な…」 「行くぞ!後退再開だ!」 モドル |