ギュッ、ギュッと雪を踏む音がすぐ横から2つ聞こえる。 漸くの大休止にも拘らず、兵を率いる将校2人は座る事も許されない。 (…比べて私は…) 溜息を1つ吐く。 自分の情けなさに。 いや、大体自分と彼らとを比べる事ゥ体が間違っているのか。 「どうかしたのか、。」 「いーえ、自己嫌悪です。お気になさらず。」 「…性格変わったか、…?」 「いぃえぇ。これが素ですからぁ…っと、」 「危ない、」 「っわ!」 立ち上がろうとした瞬間よろめいたが、新城中尉に助けられた。 「あ、りがとうございます…」 「…いや、」 妙な空気、熱い顔。 「じゃっ!」 「あ、おい!」 逃げる様にその場から走り去った。 …無骨で大きい手。 軍人以前に、男。 自分との明らかな違い――性別。 私は、女だ。 「…クソっ!」 屋敷にいる時はこんな汚い言葉、聞くことすら許されなかった。 「クソっ、クソっ…クソぉっ!」 本当に、そろそろ僕は、本気でヤバくなってきたのか? あらぬ気持ちをに対して抱き始めている。 左右に振って考えを断ち切る。 「全員銃や背嚢を持っているんだろうな?」 「えぇ、仰せの通りに疲れて投げ捨てる者が出ないか見張ってます。今の所は出とりませんが。で、橇作りには各小隊から元気な者が当たっとります。半刻の大休止終了までには。」 「早いな。」 「工兵の連中なら慣れたもんですし、他にも実家が大工やら農家の者がおりますから。」 実家か。 僕の場合はどちらを言ったらいいのだろうな。 「猪口曹長、キミの実家は何をしている?」 「は…?」 「いや、やはり良い。忘れてくれ。」 「はぁ…。」 猪口曹長はそのまま僕の背嚢も持って完成した橇の所へ行った。 実家…。… の実家は何をしている所なのだろうか。 僕の足は勝手に動いていた。 どこかへ向けて…動いている。 その先に人影が見えた。あれは… 「。」 「新城中尉。」 「橇が完成した。背嚢を置いてこい。」 「は。」 「その後、集合だ。」 「はい!」 モドル |