上官達の話を何となく聞いていると、何となく腹が立ってくる。




正しい事を言う新城中尉に中隊長殿はただ反発したいだけではないのか。




そして中隊長殿は地図を握り締めながら言った。




「上官に指図するつもりか?!良くそこまで自信が持てるな!」




新城中尉も静かに中隊長殿を睨みつけながら




「見つけたのは僕の猫ですから。」




千早に対する愛と信頼とがありありと見て取れた。




何故か心臓が大きく音を立てた。




斥候に行く、言い出したのは中隊長殿。




猪口曹長に兵の選出を任せて一人、イラつきながら少し離れた場所へと歩いていった。




しかし…




こういうのには大体下っ端が行くもんだろう。




私も選ばれる筈だ…。




思うが、なかなか猪口曹長は私の前に来ない。




遂には同行の兵3名が3名とも決まってしまった。




「猪口曹長殿!」




「な、何だ安藤。」




「何故自分が選ばれませんか!」




「それは…」




「僕が指示したからだ。」




いつの間にか隣に新城中尉がいた。




飄々と言葉を続ける。




「大隊長殿にくれぐれも宜しく、と頼まれているからな。」




それに、と新城中尉は付け足し、




「絶対に殺させないとも言った筈だ。…この戦争で死ぬ事は、僕が許さない。」




チラ、と猪口曹長が新城中尉を見遣り、中隊長以下3名が斥候へと行くのを見送った。




姿が見えなくなるとクルリ、とまた私に向き直って言う。



















「僕の目の届く所にいろ。僕の声の届く所にいろ。僕の腕の届く所にいろ。
僕から絶対に離れるな。死ぬ事は許さない。殺される事も許さない。向かってくる敵は殺せ。いいな?」









私は新城中尉の言葉と瞳に頷くしかなかった。










モドル