大隊本部のある開念寺を出て北に位置する山、大望山。 その西側の山麓に第二中隊は陣営を張った。 「、君はここに残れ。」 「わかっています。」 「…猪口曹長、彼を頼む。」 「は。」 …付いて行った所で足手纏いになる事くらいわかっている。 千早を連れ、新城中尉は陣営から離れていった。 やる事も無く、話す相手もいなく。 中心から少し離れた所での喉をゴロゴロと鳴らす。 いつもは私に少し甘えた様な目をして見て来るのに、今日はじぃっと違う所を見ていた。 その視線を追うと、そこにはチラチラとこちらを睨み付ける中隊長殿がいた。 気にしない…と逸らそうとした時、目線と目線とがかち合ってしまった。 何だか、やばい気がする。 少しだけ怯んだ様子の中隊長殿は大股で私の方へと歩いてきた。 「お、お前の猫!ずっと俺を睨んでいただろう?!」 「申し訳御座いません。躾がなっていなくて。」 うなり始めたを宥め、落ち着かせる。 そして思う。 躾がなっていないのはではなく、アンタだ。 「そ、それにお前!男にしてはやけに細いしちっちゃいな!」 「…どうやら自分は、着痩する性質のようです。」 猫の次は自分…いや、最初から私が目的か。 「ハッ!どうだかな。」 無遠慮に、嘗め回すように私を上から下まで見る視線が気分を害する。 「大方、死に場所を求めてきたんじゃないのか?」 顎を掴まれ顔を上に上げられ、至近距離で言われる。 この男、本当に、気に食わない。 「…では猫はどのように理由をつけられますか。」 「その辺にいたのを拾ったんじゃないのか?剣牙虎は飼育が可能だからなぁ!」 虫唾が走る。 飼育が可能だからといって2、3日で飼い慣らせる筈が無い。 剣虎隊の中隊長ともあろう人間が剣牙虎のことを何も知らないだなんて! 頭に血が上ってくる。 私の気持ちを代弁するかのように隣でがグオン、と吠えた。 それにまた怯んだ中隊長殿はちィ、と舌打ちすると元いた椅子に座り直した。 「猫が見つけました!北北西側道上です。」 モドル |