第二中隊は門の前で隊列を成し、前に立つ新城中尉、猪口曹長を見る。




私はその少し後ろに、と並んで立ち、兵達の興味を一身に受ける。




…何と不躾な。




正直、嫌気が差す。




静まり返った所で新城中尉が口を開いた。




「我々第二中隊の任務は真室大橋を守る為の敵情収集だ。
戦闘は敵にこちらの存在を教える事になる。敵影を確認しても逸らないように。」




その言葉はまるでこの第二中隊を率いる中隊長宛ら。




しかしその当の中隊長は屋敷の縁側で大隊長殿と何やら話し込んでいた。




…いっそ、新城中尉が中隊長になったほうがいいのではないか。




中隊長でもない人の言葉をこの場にいる兵士達は物音一つ立てずに聞いている。




信頼のある証拠だ。




「安藤!」




「は!」




不意に呼ばれ、少しばかり驚いた。




何とか平常心を保ち、新城中尉に並んで立った。




「彼は安藤。今回の作戦からこの第二中隊に入隊することになった。」




自己紹介を、と促され、すぅ、と息を大きく吸った。




「安藤、剣牙虎のです!どうぞ、宜しくお願い致します!」




とさ、と木の枝から雪の落ちる音が聞こえた。




…少々、声を張りすぎただろうか。




「―、コホン。はこれから暫くは僕と行動を共にしてもらう。皆、新しい仲間だ。仲良くしてやってくれ。」





…今、この人は何と言った?




『これから暫くは僕と行動を共にしてもらう。』?!




ぼぅっとしているとポン、と頭に手を置かれた。




「大隊長殿にくれぐれも宜しくと頼まれたんだ…。…絶対に死なせない。殺させない。必ず、僕の傍にいろ。」




まるでそれは、男が女に囁く、口説き文句。










モドル