今から、5年程前の話です。




箱に入れられ、物憂げにこちらを見つめる小さな猫と出会いました。




とても可愛らしく、大きく円らな瞳とかち合い、逸らす事ができませんでした。









…というか、逸らしたら負けと言うか少しでも隙を見せたら殺られそゲフゴフ









父様と母様と兄様に戻してきなさいと言われるかもしれないと思いながらも
その猫に手を伸ばし、胸に抱きました。




とても柔らかく、とても暖かく、まるで絹の塊だと思いました。




猫を家に連れて帰ったら案の定反対されましたが、私も断固として譲りませんでした。




気がついたら毎日掃除されている家の中が死屍累々としていて色々な物がそこら中に散らばっていました。




結果私が勝ち、庭で飼うのを許してもらいました。




その猫の名を『』と名付け、毎日毎日同じ時間を過ごし、私たちは共に成長しました。




円らで大きな瞳は少し鋭く、小さく可愛らしい体はその毛に縞模様が浮かび、
気が付けば私よりも大きくなり、口元には左右対称の大きな牙が生えました。









…って、これぇ、剣牙虎じゃねぇの…?!









気が付いた時には戦争が始まっていました。




兄は徴兵制度により戦場へと向かい、国の為に散ったと聞きました。




骨と少しの形見が家に届き、私は決意しました。




確か、今の軍には剣牙虎を相棒に戦地を闘い抜いている部隊があると聞きました。




そこに、行こう。そして共に戦おう。




「母様、私、は、兄様と共に、と共に、戦地へと逝きます。
どうか追わないでください。そして、許してください。」




呟きはのみが聞いていた。そして、闇へと消えた。




私はと共に家を出た。




長かった髪を形見に残して。
















モドル