早い所では1月下旬から俄かに色めき立ってくる。
2月に入ればもうお祭り騒ぎだ。
「14日…バレンタインデーか…。」
正直、憂鬱だ。
碌に料理もできない人間が、あまつさえ手作りチョコを作って渡そうと考える事自体がそもそも無謀なのだ。
それでも、あの男がチョコを期待していないわけがない…!
それは数日前に遡る…。
下校途中、いつもは黙って歩いている男が、バレンタイン関係のチラシやポスターを見るたびに、憑りつかれた様に「バレンタインかー、バレンタインかー」と言っていれば、気が付かない方がおかしいわけで。
そもそも私は今まで、友チョコ専門だったのだ!
友チョコなら有名店のちょっと高級なチョコを1箱買っておけば、みんなに配れるし、あわよくば自分も食べられて一石二鳥だったわけで…。
ここは困った時の母頼みか…。まずは必要なものの調達から始めようかな。
そして今から、キッチンは戦場へと化すだろう…!
前線を潜り抜け、生き残ったモノは約6分の1。
全部で何個作ったかはあえて言わないでおく。
作ったものは初心者でも簡単に作れるトリュフ。大量生産万歳。
そして遂に今日は2月14日…バレンタインデー当日を迎えた。
例え変態でもなおちゃんは女子生徒から人気があるらしい。
登校途中に何個チョコを渡されていたことだろう。
(それでも全部断っていた。それは正直嬉しかった。)
けど…肝心の…自分のチョコを渡せていないじゃないか!!
えー、どうすんの私!
いつの間にか学校着いてるし、今日に限って移動教室多いし、お昼にもタイミング逃しちゃったし、気付いたら放課後だし!!
てかもうすぐ家に着いちゃうんですけど!!
これじゃだめだ、頑張れ私、ファイトだ自分…!
「な、なおちゃん?!」
「…声裏返ってたけど、大丈夫か、?」
「だ、大丈夫だ、問題ない…じゃなくて!」
カバンの中にずっと入れていた、可愛くラッピングを施した小箱を取り出した。
「ば、バレンタイン、おめでとう?」
「フッ…ありがとう、。」
なおちゃんは、私の手ごとチョコを受け取ってくれた。
「なかなか言ってこないから少し期待してたんだが…。」
「…何を?」
「が全身にチョコを塗って『プレゼントは私』をやってくれるのかと…。」
「そのままチョコに溺れて死んでしまえ!!」
モドル
トジル