季節は冬。
詳しく言うと12月。
そう。
恋人たちの一大イベント、クリスマスのシーズンだ。
クラスも、俄かに色めき立っている。
どこのライトアップが始まっただの、あそこのツリーが綺麗だのという会話が耳に入ってくる。
先月、生徒会長専用ペットという肩書に、なおちゃんの彼女という称号が加わってからというもの、その手の話に興味がないわけではない。
しかし、肝心の相手があの様子では、この手の話も口に出しづらくなっていた。
なおちゃんはもうすぐ、大学受験というナーバスな時期に突入する。
今はそれに向けて、予備校に行き始めたりと、色々準備を開始していた。
ただ、それでも2人で過ごす時間を、なおちゃんの家での勉強会という形で作ってくれている。
最初は久々に上がるなおちゃんの部屋にドキドキしたりもしたが、今となっては慣れたものだ。
今もそうだが、本人が出掛けていても部屋に上がっている。
(それにしても…)
もう12月も半ば。
クリスマス当日まで、あと1週間を切った。
(もう、ツリーを一緒に見に行くのは無理かな…。)
元より諦めていた事だし、仕方ないと思う。
カレンダーに向けた意識をノートを広げている手元に戻した所で、部屋の主が帰宅を告げる声が階下から聞こえた。
すぐに階段を上がってくる足音がし、扉が開いた。
「ただいま、。」
「おかえり、なおちゃん。」
上着を脱ぎ、おろしたカバンからノートを出して、私の向かいに座った。
予備校から帰ってきたばかりだというのに、これからまた勉強をしようというのか、この男は!
…まぁ私が横から口出ししてもこの男が止まる筈はないので、互いに黙々と机の上に広げたノートへと向かう。
私はちょっと前から取り組んでいたので、もうそろそろ終わりが見えてきている。
「…なぁ、…」
「ん?なぁに?」
「来週の日曜日、行きたい所があるから…外で待ち合わせしないか?」
「いーよ。どこで待ち合わせするの?」
「駅前の…ツリーの下なんか、どうだ。」
正直、なおちゃんがこんなにロマンチストだとは思わなかった。
モドル
トジル