天高く、馬肥ゆる秋…鰯雲…
「乙女心と秋の空…」
はぁ、と、溜息が出てくる。ん、何でだ?
変わりやすいもの、という意味の諺だったはずだ。
確かに、自分の中で変わったと思えることがある。
ただ、この気持ちを自覚したくないと思っているのも事実だ。
いや、自覚したら負けだ…認めてなるものか…!
「どうした、上の空だな。」
「んー…いろいろと思うこともあるのよー…。」
「何だそんなに僕のことを想ってくれているのか。嬉しいな。」
「断じて違うから。」
やはり、さっき考えていたことは一瞬の気の迷いだったのだ。
今確信した。
「しかし、もう秋か。早いものだな。」
「…そうだね…」
「ちょっと前まで僕の後ろをひょこひょこついてきていたのに。」
「ちょっとそれ軽く10年以上前の話だよね?」
「僕にとっては半年前も10年前も大差ない。」
「大差あれよ。」
睨んでやろうと、直ちゃんの方を向くと(それまでずっと横を向いていた)、目が合った。
ニッと笑われた。
思わず、横に向き直ってしまった。
(って、何やってんだ私!これじゃあ…)
「何だ、まるで僕の事を意識しているかのような反応じゃないか。」
「ひっ、何で…」
「 … … 」
「 … … 」
あー、何だかとてつもなく、穴があったら入りたい気分だー。
「…。」
「…な、何、なおちゃん…?」
真剣な口調で名を呼ばれ、私も思わず構えてしまう。
「に対する僕の気持ちは、10年前から今まで、1ミリと変わったことが無い。」
「…え…?」
「相変わらず鈍いな。、僕は君の事が、好きだ。」
「…えぇっ?!」
思いもよらぬ人から、思わぬ言葉を聞いた気がする。
「そ、それはなおちゃんの勘違いだよ!」
「どうしてに僕のこの気持ちが勘違いだとわかる。君はどうなんだ?」
「どうって…何が?」
「は僕の事、どう思ってくれているんだ?」
それは、核心を突いた質問だ。
きっと、私はこの質問に答えたら、負けてしまう。
「私…なおちゃんの事…」
いや、これはもともと、負け戦だったんだ。
「すき、なのかも…」
勝負を挑んだ相手が悪かったんだ。
「これで引け目なしにイチャイチャできるな!」
「やらんわっ!」
モドル
トジル