「うー、伊藤先生の鬼ィー…!」
今日から夏休み初日!
だというのに、私は制服を着て、学校の、教室で1人、シャーペンを握り、机に向かっていた。
担任の伊藤先生はというと、それこそ山の様に課題を教卓の上に置き、「、これがお前の為に用意した課題だ。今日一日で終わったなら明日から楽しい夏休みだ。が、終わらなければ終わるまで毎日学校に来ること。じゃあ、頑張れよ!」
それだけ言い残し、職員室へと行ってしまった。
「ちくしょー、職員室涼しいんだろうなー!」
恨み言を言いながらも手と頭は動かしている。
自分で言うのもなんだが、元々頭はいい方なのだ。
「今日中に終わらせてやる…何としても!」
「僕としてもその方がありがたいな。」
「何故いるー?!」
正面から、お隣の次男坊ことなおちゃんが、ここにいないはずの人間が声をかけてきた。
「が頑張っているのに僕一人だけ遊んでいられないじゃないか。」
「…とかいって、1人でお留守番してるのが嫌だったりして…。」
「ん?何か言ったか、?」
「イイエナニモ!」
うーん、このなおちゃんの反応を見る限り、図星ッ!
「うー、やっぱ今日中には終わんないかなー…。」
「ふむ…どうしても、というなら教えてやってもいいが…。」
「ホント?!」
「それなりの礼は頂くがな。」
「う…ひゃ、」
なおちゃんの眼が妖しく光った気がした。
直後、後ろから覆いかぶさるように抱きしめられた。
「さぁ、ナニを教えてほしい…?」
「や、なおちゃ…」
「調子はどうだー…ん?」
ガラっと扉を開けて入ってきたのは我らが担任、伊藤先生だった。
「何だお前ら。随分仲がいいんだな。」
「家が隣同士なもんで。」
「しかし新城、お前は学校に用はないはずだろう。」
「妹分が鬼教師に軟禁されていると風の噂で聞いて居ても立ってもいられなくなったもので…。」
ごくごく自然な流れで私から離れ、
「じゃ。」と右手を挙げ、教室を去って行ったなおちゃんに、私は安心したのか寂しくなったのか。
「先生、私、明日でこの課題、終わらせます。」
「そうか。がんばれよ。」
伊藤先生が教室を出て行った後に携帯を開くと、メールが届いていた。
差出人は、隣の家の次男坊だった。
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受信トレイ
FROM:なおちゃん
SUB :RE:
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今日終わったら一緒に帰ろう。
課題がんばれよ。
-END-
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モドル
トジル