01.麗らかな入学式
今日は4月1日。私は新しい制服に身を包み、今日から始まる高校生活に心を躍らせる。
「じゃっ、いってきまぶ!」
大きな声で行ってきますと言いながら玄関を開けたはずが、なぜかまた壁があり、思いっきり顔面を打ち付けた。
あれっ、ここ北国だったっけ?やだなー母さんったら寒がりだからっていつの間に玄関二重扉にしてたのー?ひとこと言ってくれてたらいいのにー
「おはよう。朝から大胆だな。僕の胸に飛び込んでくるなんて。よしわかった、1Rヤってから学校へ」
「するかぁーっ!朝からなにしくさるこの変態がっ!てか不法侵入ですからっ!」
「何を言う。ちゃんと許可は取っているぞ。」
「あっちゃん!なおちゃんと同じ高校だっていうから、一緒に行ってあげてってお願いしたから!じゃあ行ってらっしゃい!」
問答無用でバタンと閉じられた玄関。逃げ道は無くなった。
「ククッ…門前の虎、後門の狼か…安心しろ、お前のこうもんは僕が」
「黙れこの変態がぁっ!」
「うぐっ?!」
なおちゃんの鳩尾にボディーブローを食らわせ、何とか変態の魔の手から逃げ出した。
そのまま駅までダッシュし、丁度ホームに来た電車に飛び乗る。
しかしそこには、また新たな試練が待っていた。
(これが通勤ラッシュ…!想像以上だわ…。)
ここから高校の最寄駅までは3駅ある。たかだか15分程度…我慢しなくては!
…ん…?
(お尻のあたりでなんかもぞもぞしてる…?)
身をよじるが、その感覚はなお付いてくる。
(最低…痴漢…?!)
でも違ったらどうしよう。
ぐるぐると考えている間にも太ももに手が回ってきた。
厭らしく這い、どんどん上へとあがってくる。
(いやっ…!)
「。」
「っ?!…なお、ちゃん…?」
「こっちへ来い。」
先程まで如何なく変態っぷりを発揮していた隣の家の次男坊が、自然な動作で私をドア側へと導いてくれた。
更には他の人の手を遮る様に私の前へ立ってくれている。
「だから一緒に行こうと言ったんだ。」
「…ごめん。ありがとう、なおちゃん。」
彼の事を声に出してこう呼ぶのは、いつ振りだろう。
昔はよくこう呼んでいたはずだ。
「しかし…許せんな。」
「全くだよ、もうっ!」
「僕ですら触れたことのないの柔肌に汚い手で触れるとは…!待ってろ、今すぐ消毒してやる」
「いらんわっ!」
今日はこれから入学式です。
モドル
トジル