皮膚の焼け爛れる嫌な臭いと共に、ロードの身体は床へと落ちる。
寸前、がしっとアレンの襟首を掴み、ぐっとその焼け爛れた顔を近づけた。
そして背後に無数の杭を浮かせ、その切っ先をアレンへと向け、言葉を放つ。




「僕らはさァ、人類最古の使徒、ノアの遺伝子を受け継ぐ“超人”なんだよねェ。」




杭を一本後ろ手に掴み、更にロードはアレンへと迫る。




「お前らヘボとは違うんだよォ!」




ドス!と鈍い音と共に、アレンの左目…呪われている方の目へと杭を突き立てた。
耳をつんざくような悲鳴を上げながらアレンは床をのたうちまわった。
一方ロードは焼け爛れていた顔の皮膚が再生し始め、既にその半分が元に戻っていた。
手に持っていた杭を投げ捨て、ロードは心底愉しそうにワラウ。
その声にアレンは左目を押さえながら壁に身体を押し付ける。
そして別の方向―時計型イノセンスに手を縫い付けられている適合者の女性―からも、
絞り出したような悲鳴が漏れる。
ロードはといえば、ワライながら私の元へと駆け寄り、腕に絡み付いた。




「僕はヘボイ人間を殺す事なんて何とも思わない。ヘボだらけのこの世界なんて
だ〜いキライ♪お前らなんて皆死んじまえばいいんだ!」




ね、?と例によってロードは聞いて来たが、
「私もその内の一人なんだけど」といってやると
「勿論は別だよォ♪」
とキャッキャとはしゃぎ始める。




「神だってこの世界の終焉を望んでいる!だから千年公と僕らに
兵器を与えてくれたんだしぃ。」




張り付かせた笑みを更に濃くしてロードが言うとアレンは立ち上がり、
左手のイノセンスの形を変えた。
今まさに、同調しているんだ。




「そんなの神じゃない…本当の悪魔だ!」
「どっちでもいいよォんなもん。」




同調というよりはアレンの感情に引っ張られているといった方が正しいか。
ロードが言うのとほぼ同時にアレンはこちらに向かって駆け出した。




…って、え、ちょっと待って!私戦えないんですけど〜!?




「フフン♪大丈夫だよォ、。」




私にだけ呟き、不敵に笑った。
その瞬間、私の前に3匹のアクマが現れた。




「僕たちは殺せないよォ?ね、?」
「…そうね。ロードがいれば大丈夫ね。有難う、ロード。」
「ど〜いたしましてぇ★」




私達がリナリーの座る椅子へ向かいながら和やかに話す一方で激しい爆風が起こり、
女性の悲痛な叫び声がした。




「その身体でアクマ3体はキツイかぁ。」




心配しているのか。愉しんでいるのか。ロードの場合、後者だろう。
そして視線を巡らせ、ある一点で留めた。
そこにあったのは時計型イノセンスと、それに手を縫い付けられている女性だった。
女性は怯え、震えた声でまた助けを請う。しかし。




「お前もそろそろ解放してやるよォ。」




天を指差し杭の切っ先を女性へと向け。
ロードが手を振り下ろすのと同時に女性目掛けて一斉に降り注ぐ。
その物凄い轟音ね中に飛び込む人影―アレンだ。
杭の標的となっている女性を身を呈してまで守るため、その中へと飛び込んだのだ。
そして女性の身動きを奪っていた杭を引き抜くと、アレンはその場に膝から折れ、
一方女性は悲鳴を上げながら壁にへばり付いた。
ロードは私でも読めない表情でその様子を見ていた。
女性がアレンに呼び掛ける声。
アレンが大丈夫だと呟く声。
何故だか無性に胸が締め付けられる。
どうして?




「何だメス。何やってんだぁ〜?」
「はは…。」




震えながらも満身創痍のアレンを女性は抱きしめていた。




「ホント、何やってんのよ私…。」
「人間に何ができんだよー!」
「でも…でも…!」




ボウ…と光の焔が時計を中心に、二人を包みながらあがった。
流石のロードも驚いたようで、目を見開いていた。
女性の背後には時計が現れ、カチ、と音を立て0時を指すと、針が逆回転を始めた。
そして、無数の歪んだ時計が針を逆に回転させながら地から宙へと浮いていった。
次第にそれは大きなドームを作り、中の様子を窺い知ることは出来なくなった。











モドル