辺りには雨が降りしきり。
街は周囲を大きな壁で囲われ、唯一外界とを繋ぐ門は錆び付き。
まるで私達が街に入るのを拒んでいるように見えた。




「んじゃあ先行くねぇ、。」
「どうぞお先に、ロード。」
「おっじゃま〜♪」




言いながら、ロードはその街へと手を延ばす。
するとイノセンスの力か、結界の様なものが張られていた。




「こんなの、ちょろ〜い★」




バチバチと厭な音と、タンパク質の燃える異様な臭いとが辺りに充満する。
しかし彼女はそれをものともせず、脳天気に舌を出していた。
そして次の瞬間には元の綺麗な皮膚組織を取り戻していた。




もおいでよぉ。イノセンス持ってるから大丈夫だよぉ。」




多分★と嫌な付け足しにちょっとドキッとしながらも恐る恐る手を延ばしてみる。
すると、何事も無く街に入ることが出来た。




「ほらねぇ♪」
「じゃないわよ。人を不安にさせる言葉吐いといて。」
「さって〜♪エクソシストはどこかなぁ〜?」




あっちかな〜こっちかなぁ〜と見事に話を反らされた。
街を改めて見回してみると、門の外とは違い空は晴れ、綺麗な青空だ。
街並を見ようとイノセンスの能力を使い空へ上がると、直後にロードも近くにあった
背の高い建物の屋上へと、その超越した身体能力で飛んで来た。
しかしその表情は険しい。




「…アイツら…も〜エクソシストと遊んでんのかぁ。」




まるで買ったばかりのおもちゃを取られたかのように言うロードの表情は無い。




「…ロード?」
「困っちゃうよねェ、バカなことしやがって。」




直後、Lv.2のアクマ数匹が、言葉の通り飛んでやってきた。




「「「も、申し訳ございません、ロード様!」」」
「好き勝手やってくれたくせにお前らがやられてんじゃんか〜。
ね、からもなんかいってやってよ!」
「なんかって…何を?」
「そうだなぁ…あ、アドバイスとか?」




無邪気さと狂気とが入り交じる彼女の笑顔に、嫌な汗が背を伝う。




「…そうね。それぞれを邪魔しないように攻撃をしたらいいんじゃないかしら。」
さっすがぁ!てか考えつかないお前らがバカだよねぇ。
次失敗したら…わかってるよねぇ?」
「「「は、ハイィ!」」」




そのまま何処かへ飛び去ろうとしたアクマの内一匹―ピーマンみたいな姿をしている―
をひっつかみ、クッションのようにロードは抱え込んだ。



「でもその前に、お仕置きィ〜♪」




言いながらロードはそいつの頭(体?)にギチギチと爪を立てた。
その光景に吐き気が込み上げたが、次の瞬間には別の事に気を取られた。
何処からか鐘の音が響き渡り、街中が一面、歪んだ時計に覆われる。




「これは…?!」
「お?何だぁ〜?」




よくよく見てみるとその時計の中には私達の姿が映し出されている。
そしてそれはつい先程起こった事。
時間が吸い出され、巻き戻っていく。
これがこの街に付いた名の所以か。
夜だったのが、朝に戻った。




「スゲー今のォ。ね、。」
「…えぇ…。」
「…ロード様、エクソシストを放っておいて宜しいのですか…?」
「いいんじゃん?」




抱え込んだアクマの血に塗れた指先を舐めながら。
また一段と愉しそうに。




「あいつらがイノセンスを手に入れるまではねェ♪」




私は時々この少女を時々恐ろしく感じてしまう。
持て余すほどの狂気を小さなこの身に宿す、この少女が。
口元に僅かにアクマの血を付けながらロードはこちらを振り返る。




「よっし、!イノセンスさ〜がそっ♪」
「そうね…行きましょうか。」




私はそれには触れられない。


ノア側にいるとはいえど所詮は人間。


その強すぎる呪いを受けてしまうから。














モドル